BREATH WORKS

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〈3〉『タイポグラフィ』新聞広告
ここでは趣向を変えて、新聞広告ならではの「タイポグラフィ」を活かして制作した、4つの広告をご紹介します。
文字が主役でメインビジュアルがない原稿は、新聞という媒体でこそ魅力を発するものです。欧文の媒体に数多くみられるアルファベットによるタイポグラフィ広告は、アルファベットの文字のシンプルさ、美しさを存分に活かしたものですが、漢字・ひらがな・カタカナと複雑な文字体系の和文で、美しく力強いタイポグラフィ原稿をつくるのは、なかなかむずかしいものです。

制作メモ
■「講談社」5段原稿は、私にとって記念すべき初の新聞広告の仕事です。広告テーマは村上龍のベストセラー小説「コインロッカー・ベイビーズ」。この仕事は制作費の制約もあり、選択の余地なくタイポグラフィ原稿になったものですが、小説冒頭の衝撃的な文章をつかって5段を埋め、後半は埴谷雄高・筒井康隆両氏の作品論評文。墨汁のしぶきをアクセントにして、この小説のもつインパクトを演出したつもりです。
■次は「日立製作所」15段原稿、広告テーマは「超高速漢字プリンタ」です。左上と右下に分けた赤色のキャッチコピー「ここから、ここまで0.4秒。」は、これだけ膨大な文字を0.4秒で出力できる、世界でいちばん速い漢字プリンタであることを表現したもの。その文字の内容は、当時のギネスブックに掲載された世界一記録のうち「世界で一番早い〜〜」という記録を、ギネスの使用許可を取った上で抜きだし、写植に打ち出したものです。現在のようにパソコン上で文字を自由にレイアウトしたり修正したりできる時代ではありません。すべて写植に打ち出し、何度も文字詰めを変えたり、誤植を修正したりで、当時で100万円くらいの写植代がかかった記憶があります。この作品は、工業新聞広告賞やクリオ賞ほかを受賞。新聞広告制作の面白さ、醍醐味を味わうきっかけとなりました。
■15段3連の「大成建設」企業広告。北海道新聞で出稿しました。北海道在住の書家(氏名を失念)の先生にメインの文字を書いていただき、北海道の歴史や気候、地域性などをテーマにしたコピー展開、記号性のあるビジュアルをアクセントに、大成建設の北海道での数々の取り組みを紹介した原稿です。
■4つ目は「トヨタ自動車」。クリントン政権が、政治的な力でアメ車の拡販を日本政府にねじ込んだという、いわくつきの出自をもったGМ社製「キャバリエ」の登場広告です。この原稿では、キャバリエの出自からその性能までを紹介したコピーを左に、右にその英訳文を敷いて、まん中を真赤なキャバリエが疾走ています。毎日広告賞、新聞協会広告賞、広告電通賞他を受賞することができました。

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