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更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26



2006年の初秋、オフィスを現在の高輪に移転して一息ついたころ。
打ち合わせにやってきた代理店のスタッフが、壁につくり付けた書棚を眺めながら笑顔でつぶやいた。

「読み終わった本をこうやって本棚に並べるのって、
 頭の中をさらけ出しているみたいで、勇気がいりますよね・・・」

ダンボールから出した本を、とりあえず詰めこんでおいた書棚。
代理店スタッフの目線の先には、あやしげなタイトルの本がまとまって並んでいた。
読み終えてブックオフ行きをまぬがれた本を書棚に残しておくとき、おおよそジャンル分けこそするが
特別意識することはなかった。だが、そう言われてから眺めてみると、そのあやしい背表紙の本の列が、
なんだかちょっと気恥ずかしく感じられた。
私の頭の中はたしかに、そんなあやしいものたちの欠けらがゴミ溜めのようになっている。

その「あやしい欠けら」は、日常生活の表面からは見えない影にひそんでいる。

日常を、普段隠されている「影」の部分にも気をくばりながら生活することは、その影をかたちづくる
日常という光の当たり方を意識することにつながる。白と黒の勾玉をふたつくっつけた太極図の形みたいに。
そしてその影の部分に常に気配りつづけていると、闇であるはずの影の中に、色彩豊かに輝くなにものかが、
たくさん隠れていいることに気づかされることがある。

日常の光によってつくり出される影の濃度が薄いということは、
日常がつくる光そのものが弱いということにほかならない。

このコーナーは、そんな影の中にひそむ断片を拾いだし、磨き上げ、影の濃度をさらに際立たせることで、
日常生活のいっそうの輝きをつかみとろうとするものです。
そうして光が強まったときにできる漆黒の影を勇気をもってのぞき見れば、そこに、豊饒な色彩の重層によってできた、
「陰」と表す色のるつぼを発見できるかもしれません。

免責事項


このコーナーでは、セックスや性にまつわる表現があります。そうした話題に不快感をおぼえる方は退出願います。
無断で書籍の文章からの引用をしています。その書籍の拡販を願ってのことですのでおゆるしください。