男親バカ一代

2009年6月20日

体育会系デッサン


ゴルフの石川 遼や水泳の入江 陵介、体操の内村 航平など、女子に負けず若い男子選手も世界を相手にキラキラ輝いている。皆かっこいいし、いい表情してるし、イケメン揃いだし。なかでも石川君。高度な技術とメンタルの強さが両立しなければ勝てないゴルフというスポーツで、若くしてあれだけ活躍しているのはほんとうに凄いことだ。
私の仕事仲間に、石川 遼と同じ年齢の息子をもつ、同じ姓のクリエーターがいるが、「同じ石川で、同じ18歳で、どうしておまえはブツブツ・・・・」なんて、なんにも関係ないのに、たまたま姓と歳がおなじ就活中の息子に向かって、つい愚痴がでてしまうことがあるそうだ。私の息子は(2009年現在)16歳、ちょっと遼君似のクレアラシル面の高校一年生である。親としても、そろそろ進路のことが心配な年ごろだ。


インターネットの「13歳のハローワーク 公式サイト」を覗くと、人気職業ランキングが表示されている。2009年9月度のランキングベスト10は、1位「警察官」2位「政治家」3位「パティシエ」4位「保育士」5位「プロスポーツ選手」6位「僧侶」7位「公務員(一般行政職)」8位「薬剤師」9位「イラストレーター」10位「ファッションデザイナー」となっていて、1005位までランク付けされていた。6位の僧侶は、前回の順位が1位!? なんで僧侶・・・??


このサイトには、職業を調べるためのキーワードがいくつか並んでいて、いろんな仕掛けで楽しく仕事のタイプ診断をしたり、調べたりできるようになっている。仕事選びの要素として、私が考えるものを思いつくままにあげると、「あこがれ(夢)」「やり甲斐」「才能」「世襲」「収入」などがある。上記のベスト10をこれに当てはめると、「あこがれ=プロスポーツ選手・ファッションデザイナー」「やり甲斐=警察官・政治家・保育士・薬剤師」「才能=プロスポーツ選手・イラストレーター・ファッションデザイナー」「世襲=政治家・僧侶」「収入=政治家・プロスポーツ選手・僧侶・ファッションデザイナー」といったあんばいか。(もちろんそれぞれ重なる部分はある)
「好き」とか「興味」とかほかにも要素はありそうだが、こうした子供向けの職業選択を謳う情報サイトで、もっともはっきり明示しなければいけないのは「才能」の有無だ。「職業選択の自由」は大声で叫んでかまわないが、いくら「好き」で「興味」があって「あこがれ」て「やり甲斐」があって「収入」が見込めて「世襲(親と同じ仕事)」だとしても、その仕事に「才能」が必要な場合「職業選択は自由」じゃない。


私の高一息子は、今年4月から美術予備校に通っている。いや、通わせている。幼少からの息子を見ていて、それなりの才をプロの目で見込んでのことだが、親の私が後年「あのときやらせていたら・・・」と後悔したくないから、というのが通わせはじめたいちばんの理由であることは自覚している。今の息子には「楽しい」と「競争心」と「好きな女子」の3つのキーワードを身につけるようアドバイスしている。これは私自身の過去の実体験から導きだした「男子の才能向上トライアングル」である。この三角形がうまく回りはじめると、その「遠心力」は「努力」へと化学変化を起こす。なんちゃって。
「才能」ばかりは、好きとか情熱とかやる気とかがいくらあっても、才能がなけりゃ伸ばすことは不可能だ。まあ、そんなことは村上龍にいわれなくても、インターネット耳年増の中高生は皆分かってるか。


そんなデッサンの経験がない息子に、ちょっとでも力になれたらという親バカが頭をもたげはじめた。経験のない人にはよく分からないと思うが、デッサンも含めアートの描法というものは実は「教えられない」ものなのだ。たとえば野球なら、バッティングフォームを手を添えて直すとか、肘の使い方を手取り足取り修正したりできる。ピアノの教練も、先生が横で「ここはクレッシェンドを意識してぇ」とかいいながら、お手本を弾いてみせたりする。ところが、デッサンの修練では、その場でお手本を見せるとか、手をとって導くとか、そういうことは一切できない。できるとしたら「このへん形の狂いがある」とか「ときどき席を離れて眺めてみて」とか、言葉でのアドバイス程度だ。本人以外のタッチで、直接画面に鉛筆や木炭を走らせるというのは、やってはいけないことなのだ。職人が弟子に技を伝授するのと似てるかもしれない。
そこで、男親バカ一代、自宅でデッサンを自ら描いて、描き方の基本を息子に見せることにしたのだ。美大試験を受けたのが21歳の年だから、実に35年ぶりにということになる。小型の石膏像でいちばん好きな「メジチ」をネットオークションで見つけ購入。息子の道具を借りて、リビングテーブルに置いた石膏を描きはじめた。すっかり錆びついていると思っていたが、意外にもカラダが忘れていない。スラスラ描くことができた。


息子にとって、こんなアート系の親はプレッシャーでもあるという。なんとかそれを好転させ利点にしたい。男親にできることなんて、こんなことしかないんだ。はてさて、どうなることやら・・・。




更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26