男親バカのうわぬり

体育会系デッサンその2


バンクーバー冬季五輪に出場する、中学生の高木美帆選手。ニュース映像で見る姿は、おもわず「ちゃん」づけして呼びたくなるフツーの少女だ。「彗星のように」という慣用句があるが、「今まで生きてきた中で、いちばんしあわせです」の名文句を14歳で残した、バルセロナ五輪の金メダリスト岩崎恭子さんの登場感と、高木選手をダブらせてしまうのは私だけだろうか。冬季オリンピック5回連続出場のメダリスト、岡崎朋美選手の笑顔もいいが、やっぱり美帆ちゃんの未知数に夢をいだいてしまう。
昨年末、民主党の仕分け作業では、スポーツ選手の育成費についても「縮減」に仕分けされてしまったが、オリンピック等で日本選手が活躍することで日本人が得られる、精神的・経済的効果は計り知れないものだ。陸上トラック種目や水泳など、プロ選手として活躍できる場の少ない種目のアスリート達には、もっと支援が必要だと思う。

男親が16歳の息子にできる支援も、おおかた金銭的なことしかない。そんな男親が、息子の美大受験をめざして、自分からデッサンを描いてみせて親バカしていることは、前々回の「男親バカ一代」で書いた。麻雀仲間の広告制作会社社長にそのことを話すと、意外な返事が返ってきた。「俺は息子を予備校には行かせず、ぜんぶ自分がデッサン教えたよ、デッサン上手いから」ですと。えっ!?自分がやってることはちっとも親バカじゃないっていうこと・・・? 子供のために手を尽くすっていうことは、フツーのことなのか、とあらためて目うろこ。自分が子供の頃、親からなにか支援されたとか強制されたとか、まったくなかったもんだから、自分がやっていることは相当な親バカおせっかいで、本来子供は自発的に動くものだと思っていたわけだ。
というわけで、なんだか嬉しくなっちゃって、またデッサンを描いてしまいました。この石膏像は、息子が美術予備校から払い下げで譲ってもらったヘルメス。抱えてバスに乗って持ち帰ったそうだ。かなり汚れている。狭いマンションなので、こんな大きな石膏像を持ってこられても困るのだが、息子のやる気を削いではいけないと、寝室の窓辺に置いた。逆光ぎみの片光で、ほとんどが影になっている。こんなまっ黒い石膏像は描いたことがない。
石膏像の汚れと、影とが区別できない。ものすごく難しい条件の光だ。ヘルメスはメジチとおなじくらい好きな石膏像で、とくにこのアングルからのヘルメスは美しい。影と汚れに隠れた形を描くのは難しかったが、息子に教えるのをすっかり忘れて、デッサンに没頭してしまった。
息子は昨年までは日曜クラスに週一回通っていたが、今年からは平日の夜間週3回のクラスに変更した。
今はセンター試験もあり、それなりに学科もできなければダメらしい。無理してつぶれてしまわないことを祈るばかりだが、若いうちに飽きずに続けられることが一つでも見つかれば、それはそれでたいしたものだと、ひとりごちている男親なのであった。




更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26