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最新デジタルオーディオのエクスタシー〈2〉


凌辱されるCDプレーヤー


5月21日、交通会館で開催された「ハイエンド・オーディオショウトウキョウ2010」を覗いてきた。「A&Vフェスタ(元オーディオフェア)」や「インターナショナル・オーディオフェア」のような大手メーカーの出店はないが、そのぶんマニアックな製品との出会いが期待される見本市だ。
平日の午後にもかかわらず各ブースは、加齢臭漂う中高年オーディオマニアで溢れかえっていた。今回の目的は「最新デジタルオーディオの動向」を探ること。左の写真は「逸品館」で行われた、リッピング・ハイサンプリングデータの再生風景だ。パソコンにリッピングしたCDデータをハイサンプリングすると、明らかに元のCDより音質が良くなってしまう!
レコード盤が誕生してから120年ほど。そしてCDが誕生して30年足らず。レコードの歴史の四分の一も経たないのに、すでにCDの存在意義が怪しくなってきている。PCオーディオに代表される「最新デジタルオーディオ」の台頭である。
その呼び方にはいろいろあるようだ。「PCオーディオ」「ネットワークオーディオ」「USBオーディオ」「ストリーミングオーディオ」などなど。どの呼称もすべてを包括できない。このサイトではアバウトに「最新デジタルオーディオ」ということにしている。いち早くCDプレーヤーに見切りをつけ、最新デジタルオーディオへ走ったメーカーは、海外では先にふれたLINN、国内メーカーではONKYOが代表格。ONKYOは、まだピュアオーディオ製品も生産しているが、パソコンブランドSOTECを吸収合併して、ONKYOブランドでパソコンを販売するとともに、「オーディオコンピューター」というベタなジャンル名で、パソコンでリッピングしたデータの再生に特化した製品を販売している。
前回のコラムでLINNの「KLIMAX DS」という、NASと呼ばれるネットワーク接続のできるハードディスクにリッピングした音楽データを再生する製品についてふれたが、このオーディオショウでさらに興味深い製品を知ることができた。PS Audioの「PerfectWave Transport」である。
この製品、なんとCDのデータを機器内でわざわざリッピングしてから、そのデータを出力する! CDプレーヤーの中にiTuneを備えたみたいな器械なのだ。なぜそんなめんどくさい機能を持たせたか。リッピングされたデータを再生に使った方が音がいいからだ。中途半端な、といってしまえばそれまでだが、CDというメディアの存在意義を残したデジタルオーディオ製品という意味では、とても「アナログ」な製品といえるかもしれない。高性能のコンドームを装着してセックスしたら、ナマでするより気持ちいいみたいな。違うか。
あと数年もすると、30年でレコードをアナクロにしたはずのCDプレーヤーは、性能の落ちた中年男のように「不要」とされるのかもしれない。
「ねえ、もっと奥まで吸い出して!リッピングして〜!」なんてね。
左の製品は「RipNAS」というLINNの製品。ハードディスクと内蔵DVDドライブをくっつけたような機器。CDデータのリッピング(吸い出し)専用の製品で、パソコンから音楽再生に不要な部分を取りのぞいたような、割り切った機能の製品である。100万以上もするCDトランスポートやDAコンバーターから再生される音と、リッピングされたデータを再生する音の差は、まちがいなく価格ほどはないのである。得られるエクスタシーが同じくらいなら、安価で簡便なほうに流れるのは確実。安価はともかく、簡便すぎるセックスはつまらないんだけどね。エソテリックをはじめとするハイエンドCDプレーヤーを供給しているメーカーの多くが、ジリ貧になっていくことは確実だ。

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更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26