フェティッシュ・レコードジャケット〈その1〉

2008.4.14

Pラインフェチ





「Pラインフェチ」って、知ってます?
Pはパンティのこと。パンティラインフェチと訳す。スカートやスラックスから浮かび上がる女性のショーツのシームラインを、フェティッシュに欲情するキワモノフェチジャンルが存在する。

一般に日本の女性の多くは、ショーツのラインがヒップに出ることに無頓着だ。やっぱり西洋下着着用の歴史が浅いせいなんだろうか。(わたしはたわしコラム「究極のメンズショーツ」参照)
だから「Pラインフェチ」なんていう、たぶん日本独自のスペシャルなフェティッシュ対象が生まれることになる。女性が何気なく穿いているショーツのシームラインが、タイトスカートやスキニージーンズなんかから、くっきりと浮かび上がるのを、嬉々として眺めているフェチが街中にいるのだ。

私はPラインフェチではない。しいて言えばごく一般的な「 尻フェチ」傾向。できればショーツラインが出ていない生尻を所望したい。だが、カードルや補整下着でがっちりとお尻全体を固めてしまったものは、ラインが出ていなくてもよろしくない。歩いていて揺れないお尻は不自然この上ないもの。洋画や海外のテレビ番組で見るかぎり、外国の女性の多くはTバックショーツを穿いたりして、ヒップラインがプルンと美しく見えるよう心がけているようだ。

日本の女性たちは、Tバックショーツを穿くことに抵抗があるらしい。本来Tバックショーツは身体のラインを美しく魅せるファッションアイテムなのだ。「Tバックなんて、なんだかいやらしわ」とか「くい込むのがいや」とか言ってるすぐ後で、貴女のお尻に目線をくい込ませて、生つばを飲み込んでいるPラインフェチたちがいることを、少しは意識した方がいい。

ま、そんな歪んだTバックショーツ啓蒙活動はともかく、こうした私のフェチ傾向は、当然レコード蒐集にも影響を及ぼしている。エクスタシーオーディオコラム集の「アナログ・エクスタシー〈1〉」で紹介したように、私は「透けものフェチ」でもあるから、ジャケットの女性の着衣が透けてたりしていたら、もう値段も確認せずレジへ進んでしまう。

ここでは、そんな私のフェチサーチに引っかかったフェティッシュジャケットコレクションをご紹介する。レコードジャケットでなかったらば、どうということもないビジュアルだったりするが、レコードの内容との関連でフェチ嗜好に合致したり、逆にレコードの内容とまったく無関係なビジュアルの場合も「アーティスト無視」な趣味優先姿勢が感じられて、フェチ嗜好を刺激する。もちろん、ご覧になって何も感じないとしたら、それはあなたにとってフェティッシュなものではないということだ。

フェティッシュ・レコードジャケット・コレクション(画像クリックで拡大表示します)

■「ブルース・トゥー・イースト/山本剛トリオ」
このジャケットは裏面である。表面は目次ページでアイコンに使ったつまらないカット。アーティストとも収録曲ともなんの関係もないこの写真からは、フェチ臭がプンプン。このアルバムはダイレクトカッティング盤(演奏をテープに録音せず、直接カッティングしたレコードで音が抜群に良い)なのだが、それよりこの裏面の写真がレジに向かわせた。オーディオファイルな音はもちろん、演奏も良い。

■「Swingin' on Broadway/THE JONAH JONES QUARTET」
もう「レジまっしぐら」なジャケット。ネオン輝くブロードウエイを闊歩する金髪女性二人。手に持つオシャレなバスケットは、どういう意味なんだろう。ちゃんと内容と連動したビジュアルで、私のフェチセンサー振り切り。


裏面(左)のジョナ・ジョーンズおじさんの、愛嬌のある演奏中のモノクロポートレートとは落差がありすぎ。ミュートトランペットによるカルテットのネアカなスイングジャズ。なかなか良い声でボーカルも披露している。


■「San Francisco Moods/CAL TJADER」(再発盤)
女性の足元ジャケットは、なんといっても「COOL STRUTTIN/SONNY CLARK」が有名だが、フェチ臭はない。このカル・ジェイダーのジャケットは、アルバムタイトルのとおりサンフランシスコのケーブルカーをバックに女性の足元がアップになっている。スカートの中のシミーズ(古)のチラ見えがいい。ギターが入ったカルテット盤で、カル・ジェイダーはビブラフォンとピアノを演奏している。好内容盤である。

■「MODERN JAZZ RHYTHMS/THE SYMPHONIC JAZZ ORCHESTRA」
「透けもの」の一枚。なぜか一番上の写真は、その他の3枚の写真と違っている。下の女性は半尻までサービスしている。
MODERN JAZZ RHYTHMS というタイトルだが、内容はオーケストラもので、ガーシュインの曲などを、ものすごく真面目に演奏している。ジャケットの印象とはまったくかい離している。ジャズアルバムではない。


■「a touch of the blues/LEE WILEY WITH BILLY BTTERFIELD」
白人女性ボーカリスト「リー・ワイリー」のアルバム。リー・ワイリーには「night in manhattan」(左下/この盤は10インチ盤)という名盤があるが、街灯に女性が両手をしなだれるこのジャケットは、即買い。別にジャケットに凝らなくても実力で売れるシンガーの、唯一のフェティッシュ盤である。


■「BY JUPITER & GIRL CRAZY/Jackie Cain & Roy Kral」
ボーカルデュオ「ジャッキー&ロイ」のアルバム。「ここまでやるか」と感嘆させる、ジャッキー・ケインとロイ・クラールご当人による大胆なコスプレジャケットである。かなりの自信と露出嗜好がなけりゃ、ジャケ写真だけのために、きわどい太股も露な衣装は着られないだろう。ブロードウェイ・ミュージカルを片面ずつとりあげている。


見開きジャケットを開くと収録スタジオでのスナップ(左)が。真面目に取り組む二人の表情との落差がまたいい。


■LET'S GET ACQUAINTED WITH JAZZ( FOR PEOPLE WHO HATE JAZZ )/THE JIMMY ROWLES SEXTET」
ジミー・ロウルズがハロルド・ランド/コンテ・カンドリ/レッド・ミッチェル/バニー・ケッセル/ラリー・バンカー/メル・ルイスという、そうそうたるメンバーを揃えアルバムにしては、実に下品なジャケット。タイトル自体ふざけてる。


■「 more vibes on velvet/TERRY GIBBS」 
楽器を女性の身体に見立てるのは、シュルレアリスト「マン・レイ」の写真作品「アングルのバイオリン」が原点。このジャケットではジャズビブラフォン奏者テリー・ギブス自らが、ヴィブラフォンの鍵盤を繋げて、女体に乗っけてにやけた顔をしている。なんて悪趣味で秀逸なデザインなんだろう。あまり多くないスケールのビッグバンド風バックで、ソロをとっている。佳作盤。


■「PEPPER POT !/ART PEPPER」
アート・ペッパーは、名前をもじったレコードが何枚かつくられている。下の「modern art」は超々有名盤だが、タイトルは「art」を引っかけている。フェチジャケとして紹介する左のアルバムタイトルは「pepper」の方をもじったベストコンピレーション盤。interlude レーベルは、ほかにも変な写真を使った凝ったジャケットデザインで、いろいろコンピ盤を出している。やっぱりアート・ペッパーは最高!

■「Black Satin/GEORGE SHEARING QUINTET」
ラバーフェチとかビニールフェチとか、肌にまとうフェティッシュアイテムはいろいろある。そのどれもテラテラとウエットな光沢感を演出するブラックがキモだ。ジャケットに美女を使うのは、ジョージ・シアリングのアルバムのいつもの手口だが、このジャケットには美女ならぬビショビショなフェチ臭がある。


■「MIDNIGHT On Cloud 69/GEORGE SHEARING GUINTET/RED NORVO TRIO」
ぐったりとまどろむブロンド熟女。モノクロ写真に単色ベタのせというのは、なんでこうジャズ風味があるんだろう。ブルーノート盤で、こういうのをたくさん見ているからか。ジョージ・シアリングの演奏に、AB面ともおしまいの2曲にレッド・ノーボの演奏をカップリングした、いい加減なアルバム。ヴァン・ゲルダー録音だが、サボイらしいくぐもったレンジの狭い音。レッド・ノーボの演奏はなかなかだ。

■「Careless Love/JOE TURNER」
グラフィックデザインがいい。右のホワイトスペースが、半開きのドアになっている。寝乱れた痕跡のベッドに、真っ赤なタイポグラフィ。タイトルにマッチしている。ジョー・ターナーの軽めのブルースボーカル盤。


■「this is Pat Moran/PAT MORAN TRIO」
AUDIO FIDELITYレーベルのジャケットは印刷が独特で、密度感のある美しいカラー印刷はオリジナル盤でしか味わえない。ピアノの鍵盤に置かれた行儀の悪い足。この赤いハイヒールが、柄の入った布製だと分かるのはオリジナル盤だけ。再発盤は赤がベタッとつぶれている。ビル・エバンストリオの超名盤「Waltz for Debby」ですばらしいインプロビゼーションを展開しているベーシスト「スコット・ラファロ」の、よく謳うベースが聴ける。

■「JAZZ for Relaxation/MARTY PAICH/LARRY BUNKER/JOE MONDRAGON」(再発盤)

なんだろうこの静寂感は。全裸の美しい女性がモチーフになった写真を使っているのに、エロティックな印象がまったくない。オブジェのようだ。フェチはエロと等価ではない。


■「SWINGIN' DORS/DIANA DORS/WITH THE WALLY STOTT ORCHESTRA」(再発盤)
通常ジャケットのコロムビア盤はもっているのだが、紹介するのは珍しい観音開きのオリジナルジャケットの復刻盤。ダイアナ・ドーズは見たとおりのモンローばりのグラマー女優。だが、けっして見た目だけでないボーカル盤である。ちょっと見すれた感じだが、明るくキュートでクセのないストレートな歌唱だ。モンローみたいなべったりの色気を予想していたが、肩透かしだった。大好きなボーカル盤の一枚。バックバンドの切れ味もすばらしい。

観音トビラを開いて、オリジナル盤と同様の赤盤レコードをとりだすと、ダイアナがこっちを熱く見据えるモノクロドアップ。残念ながら再発盤なので、印刷再現性が悪い。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26