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アナログ・エクスタシー

2008.2.23

■2008年2月9日(土)朝日新聞夕刊
(長期購読者に免じて転載おゆるしください)
社用でケーブルテレビ(CATV)の契約をしていてる。
一昨年あたりからはすべてのチャンネルがデジタル受信になった。アナログテレビにつきもののゴーストはまったくなく、クリアな画像を楽しむことができる。ところが風が強い日や嵐の日など、荒天のときは突然視聴できなくなることがある。自宅のポータブルアナログテレビは、まともに映らないが画像や音声が途切れることは絶対にない。
デジタルだとテレビ受信もフリーズするのだ。奇麗に見えるかまったく見られないか、どちらかしかない。
「アナログ人間」「デジタル人間」などと人を例えることがあるが、デジタル人間もやはりフリーズする。仕事で自分のキャパシティを越えた状態になると、なにもできなくなる。


DVDディスクの寿命は、質の違いによってはかなり短いという記事が、朝日新聞の夕刊トップに出ていた。アナログレコードは80年前のSP盤でも割れないかぎりちゃんと音が出る。この記事を読んで「やっぱりアナログはいい」と、ひとりごちてしまったのは私だけだろうか。
当方のシステムでは、CDの音質はいまだにアナログレコードを越えられない。「それはおまえのシステムが悪いからだ」と言われればそうなのかもしれない。だが、アナログレコードから取り出される音楽の、力強さ、滑らかさ、リアリティある音場感は、CDのそれとは似て非なるもの、という感じがどうしても拭えない。CDを再生していて大人し化に鳴っていたスピーカーが、レコードを再生するととたんに朗々と活き活きしたスピーカーに変身する。
「アナログ追求、アナクロにあらず」
アナログレコードを高音質で再生するためには、それなりの機器と使いこなしが必要なため、多くの人たちはアナログレコードに入っているほんとうの音を知らない。だからCDの音に慣れた人たちが、レコードの音を「懐かしい音」と感じるのは仕方のないことなのかもしれない。
アナログレコードの音質、アルバムジャケットの魅力にエクスタシーを感じる人は、感性豊かな人だと思う。自画自賛だがほんとうにそう思うのだ。そしてアナログレコードの実力を知っている人は幸せだ。ちまたの中古レコード店には、発売当時3,000円くらいしていたレコードが、その10分の1、中には100分の1ほどの中古価格で手に入れることができる。ほんとうにいい時代になったと思うのだ。初任給手取り30,000円に届かない時代に、2,000円もしたレコード。一枚のレコードを買うにも店頭で悩み逡巡しまくっていたものだ。
デジタルが席巻している現在だが、細々とながらもアナログレコードは発売されつづけている。インターネットというデジタルインフラのおかげで、そうしたマイナーなレコードも簡単に手に入る。そして、さらに嬉しいのが、45回転の復刻名盤がたくさん発売されていることだ。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26