最高裁有罪

Pラインフェチの末期

以前、RECORD & JACKET COLECTIONコーナーのコラム「フェティッシュレコード・コレクション〈1〉」で「Pラインフェチ」についてふれたことがある。タイトスカートやスキニージーンズに浮かび上がるパンティラインをフェティッシュに愛好する男たちのことだ。マスコミを賑わした大学教授やタレントのいわゆる「盗撮」行為は犯罪であるが、街中を歩いている女性のスカートやスラックス姿を撮影することは、これまで犯罪にはあたらないとされてきた。

ところが、2008年11月某日の新聞記事には次のような最高裁判決が紹介されていた。「撮影がズボンの上からでも社会通念上、下品でみだらな動作であることは明らか。被害者に恥ずかしい思いをさせ、不安を覚えさせた」として、スーパー店内で女性の尻を撮影した自衛官の有罪が確定したのだ。判決は裁判官5人のうち4人が有罪の多数意見。一人反対意見を付けた裁判官は「ズボンをはいた尻はだれも見ることができ、条例に定める『服で覆われている部分をのぞき見する行為』とは質的に異なる」と無罪を主張したそうだ。


実は私、5年ほど前、息子の小学校の運動会会場で思いがけず「ズボンの上からの撮影」をやらかしてしまったことがあるのだ。
夏の名残の強い日差しの中、ビデオカメラを片手に良き父親を演じながら清々しい空気を味わっていた。体育館内で家族一緒の昼食を摂ったあとの午後、息子が登場する演目を撮影しはじめたカメラのファインダーに、誰かが被さってきたのだ。オートフォーカスは手前の人影に勝手にピントを合わせた。それは、父兄参加の母親だったのだろう。ジーンズの後ろ姿だったのだが、そのお尻があんまり恰好良かったので、思わずカメラから目を外して肉眼で確認してしまった。


そして、そのあと、明らかに、「意図的に」、そのジーンズのお尻を撮影し続けてしまったのだ。たぶん5秒か長くても10秒以内だったと思う。だが、そのときのドキドキ感は未だに忘れられないほど強烈なものだった。はじめて「盗撮」する気分を味わったことになる。もちろん私には盗撮の嗜好はないから、後にも先にもこれ一回きりのことだが、これは犯罪なんですと。


最近、リコーのコンパクトデジタルカメラを気に入って持ち歩いているが、ヘタに人に向けて構えないように気をつけなければいけない。そのうち、「いやらしい目で見られた」とかいう理由で、しょっぴかれることになるのだろうか。視線痴漢行為とかいう名称で。街中尻ウォッチャーの私なんか、もともと目つきも悪いしすぐ捕まりそうだ。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26