経口免疫寛容

このコラムで書いてきたように、私の数十年来の胃腸虚弱は「乳製品アレルギー」を発見回避できたことで改善、理不尽な下痢症状がなくなった。日々の生活で排便の切迫感から開放されたことは、実にすがすがしい限りなのだが、一難去って別のすがすがしくない事態に陥っている。胃腸虚弱状態を脱したことで、体重がおそろしく増えてしまったのだ。
乳製品アレルギーに気がつく前、58kg前後だった自慢のスリムな体形が、なんと70kg越えメタボに!おかげで、おしゃれなスキニーなジーンズに股が入らない。スラックスのウエスト出しをしないと苦しい、というか社会の窓がきちんと閉まらない。ワイシャツの首元のボタンがとまらず、ネクタイの結び目が「大橋巨泉」状態に広がる。
ま、もともと着道楽・買物道楽な人間なので「サイズが小さく着られない」という分かりやすい大義名分で新しいアイテムの購入ができるのは、散財の罪悪感を忘れさせてもくれるわけだ。
私の「乳製品アレルギー」は、下痢するだけで、蕎麦アレルギーとか小麦アレルギーのように、ヘタをすると命にかかわるなんて重篤になることはない。だが、食物アレルギーの重症患者にとって、日々の食事に命の心配をし続けなければならないのは大変なことだ。
免疫は本来、すべての異物を攻撃するが、腸を通じて常に体内に入ってくる食物は、免疫反応が起こらない。このことを「経口免疫寛容」というのだそうだ。ところが何かの間違いが起こり、食物が攻撃対象となったとき、過剰反応で体も攻撃されてしまう。このときの反応がアレルギー症状として起こる。
上に掲出した新聞記事「食物アレルギー、食べて治す」には、ここ10年、食物アレルギー治療で注目されている「食事療法」が紹介されている。重症の乳製品アレルギーの小学生に、毎日発作(アナフィラキシー)を起こさないギリギリの量の牛乳を飲ませ、アレルギーを押さえる薬を併用しながら、牛乳の量を増やして治療する。そうしてアレルギーを起こす食材が「経口免疫寛容」となると完治だ。
この「食餌療法」は、アナフィラキシーを起こさない、症状の軽い患者にも有効なのだそうだ。もちろん危険を伴うため、専門医のもとで行わなければならないということだ。それほど長くはない老い先だが、大好きな乳製品を食べながら余生を過ごせるとしたら、ちょっと考えてみてもいいかな。


更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26