けいべつ

2007.11.15

私自身、食べ物に好き嫌いのある人が大嫌いで、軽蔑すらしていたのです。そんな私がその「好き嫌いのある人」の仲間になってしまったのだ。

ある日、仕事先での昼食を新宿駅中のイタメシ屋で摂ったときのこと。ミートソーススパゲッティを頼んだ。しばらくしてテーブルに置かれたそれには、パルメザンチーズがたっぷり振りかけられていた。チーズをすくい取ることもできず、仕方なく店員の女性に声をかけ「申し訳ないけど、チーズがダメなので食べずに帰ります」と、絶望的な気持ちで断った。最低な軽蔑すべき奴を自らやっているのだ。「あ、そうですか。すぐ作り直してきます」意外な店員の応答に、救われた思いと、しばらくそこで嫌なやつのままでいなければならない後ろめたさが混ざり合って、肝心なミートソーススパゲッティをちゃんと味わうゆとりが持てないまま、胃袋にほうり込むようにして、早々に店をあとにした。

そのくらいのことをできるほど、効果が表れていたということ。乳製品断ちをして半年くらいで、次第にお腹の調子が落ちついてきた。一年たち二年たちと年を重ねるごとに、むやみな下痢はすっかりなくなっていった。以前ならきっと下痢するだろうな、というようなメニューの食事や、昼食で熱い中華麺をかっこんで食べても、だいじょうぶなのである。

今では、料理の匂いをかいだり、少し口に含んだだけで、その料理にバターが使われていると分かるようにまでなった。男の甘党両刀使いで、大好きだった生クリームたっぷりのケーキや、クロワッサンも、プリンも、ミルクチョコにも未練がなくなった。原因不明の下痢はほとんどなくなり、駅のトイレに駆け込むというような、ひっ迫した状態になることも、ほとんどなくなったのだ。そればかりか、ひどい胃下垂だったのが改善されて、今ではちゃんとみぞおち辺りに胃があることが、成人病検診のレントゲン写真で分かったのだ。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26