コラー幻想

2008年11月25日

「ありえない」って!?

新聞広告の制作が主な仕事のひとつなので、掲載される新聞を購読することは掲載作品資料としても欠かせない。読売新聞は営業の勧誘がしつこいのがいやで、現在は朝日新聞と日経新聞を購読している。2紙朝夕刊を購読していると、挟み込まれた折り込みチラシを含め、数日で10センチくらいの高さに積もってしまう。これを100円ショップで購入した新聞原稿ストッカーにたたんで、資源ゴミにするのはもちろん代表取締役庶務兼任たる私の役目だ。
日経新聞の夕刊を読んでいる人は多くはないようだ。朝夕刊両方購読する料金と朝刊購読だけの料金は数百円しか差がないが、日経新聞は会社で読むことが多いようだし、経済ニュースが主な購読目的だから、企業で購読している場合は、朝刊だけの契約はそれなりに購読金額の抑制につながるのだろう。出入りしている広告代理店でも、制作している主な新聞広告は朝刊に掲載されるため朝刊はとっていないようだ。
日経新聞の夕刊には、朝刊の充実した経済情報とはうって変わって「健康情報」がふんだんに掲載されている。健康情報というものは不変ではなく、最新の研究開発などによって過去の知識や風評が刷新されることが多々ある。最近不安がささやかれている「新型インフルエンザ」の情報などは、すべてが予測情報だけに日々目が離せない。


日経夕刊フロントページの下に「あすへの話題」という小さな持ち回り連載コラムがある。このコラム、健康情報ではないのだが、先日のコラムに驚くべき記述があった。筆者は分子生物学者「福岡 伸一」氏。世間で常識とされている、中年以降ガタが来やすい関節に大切なコラーゲン摂取について、「食品として摂取したコラーゲンが、摂取した身体に補給されることはまったくありえない」と断じているのだ。この太字にした5文字には「、」を打って強調されている。また「普通の食事をしている限り、コラーゲンが不足するなどということもありえない」という。
筆者は、コーラゲン摂取による改善効果があるとすれば、それは「プラセボ効果」であり「コラーゲンの共同幻想」にほかならないとしている。


ところが、翌週の同じ日経(朝刊)の「健康生活」という連載コラム記事では、まったく逆の記事が掲載されていた。「柔軟な体へ「コクゴ食品」」というタイトルの記事。「コグコ食品」とはコラーゲン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸の豊富な食品のことだ。三つとも関節や腱、靭帯などに含まれるため、この記事の筆者「平石クリニック院長平石 貴久」氏は「(自分がチームドクターをしている箱根駅伝選手の疲労回復、関節炎の予防に)この三成分を多くとらせるようこころがけている」と記述している。
先に紹介した記事はコラーゲンのことだけなので、グルコサミン、コンドロイチン硫酸の摂取が有効なのかはここでは触れないが、コラーゲン摂取についてはどっちの見解が正しいのだろう。というか、日経新聞たるものが、こんなに正反対の情報をぽこぽこ掲載していることに呆れる。朝刊しか目にしない読者は、コラーゲン幻想から醒めることはないということになる。


最近、以前スキーで痛めた左膝が激痛を起こし、何度か駅の階段で立ち往生する始末の私、食餌でのコラーゲン摂取に心がけていたのにどうすりゃいいの。とりあえず、見解が不明なグルコサミン、コンドロイチン硫酸のサプリメントで「プラシーボ」に浸ろうか。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26