続・ネコ街ック天国

2008.6.25

忠猫ノラ公

前回のコラム「ネコ街ック天国」で野良猫をテーマにしたが、先日NHKの番組「地域発!ご近所の底力」で、都会の野良猫糞尿被害とその解決策について放送していた。


番組中、日本の猫の歴史にもふれていたのだが、日本には奈良時代ごろ、仏教の教典が鼠(ネズミ)に噛られないよう、中国から輸入したのだそうだ。そして明治時代、日本でペストが流行したときに、ペスト菌をもつ蚤を媒介する鼠を駆除するために、猫飼いを奨励。たくさんの猫が輸入され、飼われるようになったということだ。調べると、当時コレラ菌発見で有名なコッホ博士が来日したときに「猫は鼠を捕るが、病気は媒介しない」と、猫飼いを勧めたことが内務省を動かしたらしい。


ネットで調べはじめたら、面白いことが分かった。明治時代における、ペットとしての犬と猫の受けとめられ方が、現在とはだいぶ違っていたということだ。明治時代に発行された読売新聞の社説で、犬と猫をテーマにした記事をご紹介する。

明治の読売新聞トピックスより
1909年(明治42年)2月9日付社説「一事が万事(飼猫の奨励に就て)」
「(記事冒頭)警視庁にては去る六日を以って一の告諭を発し、ペスト予防の為めに鼠を捕ふることを奨励し、それには猫の飼養が肝要なりとして、管下各戸に猫を飼ふことを勧めたるが、尚近日を以って巡査を派し各戸に就きて一々猫を飼ふべきことを説き廻らしむる筈なりと云へり。」


警視庁がペスト予防のために猫を飼うことを奨励して、巡査に住宅を廻らせて説得する、と書いてある。犬のように役に立たないはずの猫が、なんとも頼もしい英雄扱いだ!


■明治の読売新聞トピックスより
1911年(明治44年)12月27日付社説「狂犬を根絶すべし」
この時代たびたび狂犬病が流行したということで、恐ろしい狂犬病を防ぐために、犬を戸外で飼わないよう指導し、従わないならその犬を殺せる命令を出せと、警視総監に対策を求めている社説だ。


明治36年には、飼い犬に課税するという「畜犬税」案が東京府で提出され、明治40年、横浜でもこの畜犬税を導入。さらに明治42年には、上述のペスト予防のため、横浜で猫を飼う家庭に「飼育手当」を支給したそうだ。この時代、猫飼いは優遇され、犬飼いは冷遇されていたわけだ。


つまり、今ノラをやっている猫たちは、こうした「役に立つために飼われた猫」の末裔ということになる。


「ご近所の底力」では、都会で猫との共存を選択、野良猫を躾けるという解決策を実行している住民を紹介していた。野良猫にエサを与えつつ、その側にマタタビの匂いつきトイレを提供して、糞尿の害を減らすというものだ。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26