わたしのたわし

2008年11月2日

なんだかうまく落ちない


「わたしはたわし」というタイトルのコーナーなのに、タワシのことに触れてなかった。


繰返しになるが、私は家事を率先してやるタイプだ。男がやる家事は学研肌になりがちで、東急ハンズの家庭用品売り場あたりをうろついているおっさんは、家事を「追求」しちゃっている人が多いんじゃないだろうか。単身赴任とか、奥さんが病気でとかやむにやまれぬ原因で、しかたなく買物に来たのかもしれないが、家庭用品売り場のおっさんの背中はおおよそ生き生きしている。
今いちばん使ってみたい台所洗浄用具は「ささら」だ。竹だかなにかの細い繊維を束ねた小さい箒みたいなやつ。ラーメン屋で野菜炒めやチャーハンを調理したあと、真っ黒な熱い中華鍋に勢いよく水をかけながら、シャカシャカと鍋肌をこそげるのが「ささら」。かっこいい。タワシじゃああいう格好よさは演じられない。自宅ではすでに鉄鍋が絶滅しているいためシャカシャカできない。調理したマーブルコートフライパンをタワシで洗う度に想像している。

家族が実家へ帰ったある日の日曜日、以前から気になっていたステンレス片手鍋の焼けつきに着手した。東急ハンズでみつけた「ステンレス専用磨きクリーム」をつかって徹底的に落とし、磨いた。完璧に磨かれた鍋肌に映る、うっとり眺める自分の顔と視線が合って慌てて目をそらしたりもしたが、汚れが落ちたときの喜びは、なににもかえがたいストレスの発散なのである。男のホビーな家事仕事に対して「できる主婦」の家事は、多分にナルシズムが原動力になっているように思う。「すてきな奥さん」を隅まで読みそうなタイプとでも言おうか。もちろんナルシズムは、強いエネルギーをもたらす原動力の一つだから、そのことを否定する気はない。だが「こんなに家族に尽くしている私」というスタンスで家事をこなす主婦というのは、どうも好きではない。タレントの松井和代あたりの笑顔を想像していただきたい。日々、家事を苦痛なく続けられるということは、愛情というすり替えのナルシズムが必要なのかもしれない。


お宅の台所にタワシはあるだろうか。以前、新築祝いで訪問した友人宅のキッチンにタワシが見当たらなくてガッカリした記憶がある。タワシを使わないとキレイに洗えない食器や料理用具はたくさんある。スコッチガードスポンジだけじゃダメなのだ。タワシの実力はエコにも貢献するはずだ。油にまみれた食器洗いに中性洗剤を使うのが常識となってしまったが、私は洗剤をつかわない。タワシひとつで「キュッキュッ」と奇麗になるのだ。


試しに、ハンバーグだかカレーだかを食べたあとの皿を、流水の下でタワシで何度かぬぐってみてください。どうですか?指で触ると「キュッキュッ」と、え?しない。それは、貴女の指先に油分が付いているからなのです。指先を石鹸で軽く洗ってから、もう一度さっきの皿に触ってみましょう。ほら「キュッキュッ」でしょ。タワシと水だけで油汚れは落ちるんです。エコです。あ、食器洗い機をお使いですか。手が荒れるから・・・。洗剤を使わなければ手荒れも防げます。水が冷たいとダメ?そうですか、好きにしてください・・・・・。


先日、実家の近くのディスカウントショップで、なかなかの優れものを見つけた。名前を「水滴ちゃんとふき取り」という。他に「超吸収スポンジ 」という同様の製品もある。18娘の肌も及ばないプルンと弾力のある手触りの、鮮やかな青色をしたスポンジみたいなものだが、洗浄用途に使うものではない。これは、名前のとおり水滴をふき取るための台所用品。洗面所のホーロー洗面ボールや風呂場のタイルなど、水滴をそのままにしておくと水滴の形のこびりつきが発生する。
たぶん水の中の石灰成分だと思うが、放っておくと頑固にくっついてなかなか取れなくなる。そんな悪さをする水滴を放っておくとたいへん、ということでこのスポンジで水滴をキレイに吸い取ってしまえば、後々の掃除が容易になるわけだ。使い方は水滴を拭うだけ。たっぷり水分を吸ったら、絞ればいい。このスポンジ、水分を含んでいるときはピチピチ娘だが、乾くと干物のように硬くなる。水を含ませればもとの娘に復活するのがなんだか嬉しい。用途を分ければ、ガラスコップなどの水滴取りにも使える。
あ、食洗器使ってるんでしたね・・・。
この水滴とりスポンジとタワシ、それにスコッチガードスポンジの3つがあれば、台所は無敵だ。


タワシの深いい話をしたかったのに、だいぶ浅くそれてしまった。
ハイブリッドカーのウインドワイパーとか、電磁調理器の横のタワシとか。アナログだのレトロだのとひと括りにしちゃいけない、ふだん存在すら忘れてしまいそうなその存在感、なんかいいと思いませんか。(タワシネタなのに落ちのわるい話だ)


ちなみに「亀の子束子」のホームページは楽しい。
原材料の解説から動画による束子作り紹介などとても丁寧。今でもほとんど手づくりなのには驚いてしまう。「亀の子束子誕生秘話」のページに、発明した西尾正左衛門氏が明治時代中期に文京区小石川に居住していたとあって、ますます親近感を持つこととなった。マッサージ用束子でのボディケア「お風呂で爽快たわし健康法」を丁寧な解説付きで紹介している。オンラインショップでは、いろんな種類の束子のほか、亀の子束子でつくった亀とか、携帯ストラップとか、亀の子ブランドグッズまで販売している。28センチもある掃除は使えない巨大な束子まである(受注生産)。商品名も「ニシオくん」「タムラさん」「とにかくシマシマ」などなど、ゆるくていい。さらには商売敵であるスポンジ製品まで開発・販売している度量の広さだ。


更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26