SOMETHIN' エクスタシー

2007.11.15

オーディオがまだ、文化的でメジャーな趣味と認識されていた1970年代。若者(私)は音楽に飢え、高価なレコードを買う替わりに、FMから流れてくる貴重な音源をTEACのA-20というカセットテープデッキでエアチェックしていた。あの時代、デパート(百貨店)には、必ずちゃんとしたオーディオ試聴コーナーがあり、オーディオ専門店のように大小のスピーカーを、壁いっぱいに積み上げてた試聴室があった。
そんな若かりしある日、何の用だったか忘れたが、上野松坂屋のエスカレーターを降りてきたとき、エスカレーター近くのオーディオ試聴コーナーから、ものすごく大人っぽい音楽が耳に飛び込んできた。「な、なんてかっこいいんだろう!」もう少しでちびるかと思うほどのエクスタシー。はやる心を抑えて途中まで降りかけたエスカレータを逆に駈け上がり、何気ないふうを装って試聴室に入り、カウンターに置かれた空のレコードジャケットを盗み見たのだ。
■たぶん、今までいちばん再発売された回数の多いジャズレコードなんじゃないかと思えるほどの名盤。このレコードからジャズ入門できた私は幸せ者だ。オリジナルに近い盤から、45回転盤、再発和盤など十数枚も所持している。


「SOMETHIN' ELSE」正直言うとそのとき、どこがタイトルか分からなくて、タイトルを読めなかった。とにかく(まっ黒くて右側に英語のタイトルが恰好良くレイアウトしているレコード}と網膜に焼き付け、忘れないうちにとすぐさま秋葉原の石丸電気へと走った。
これが、私がジャズに嵌まったきっかけだ。
このあと、同じマイルス・デイビスの「Jazz Tracks」という輸入盤のB面に収録されていた「グリーン・ドルフィン・ストリート(ON GREEN DOLPHIN STREET)」で、完全にノックアウト。
■この「グリーン・ドルフィン・ストリート(ON GREEN DOLPHIN STREET)」という曲については、「グリーンドルフィン・エクスタシー」(工事中)というタイトルで別途、能書きをたれている。
ちなみにこのレコードジャケットデザインは使い回しされていて、ほかにもタイトル違いで同じイラストを使ったレコードがある、輸入廉価版だったようだ。


■こちらは上記「Jazz Tracks」盤のB面がA面として発売された「1958MILES」、日本限定オムニバス盤。池田満寿夫デザインのジャケットということでも知られている。


上記「Jazz Tracks」もオムニバス盤だが、このA面も鳥肌モノで、ジャンヌ・モローが主演した「死刑台のエレベーター」のサウンドトラックが収録されている。ずいぶん後になってこのサウンドトラック盤を手に入れた。六つ目レーベルのコロムビア盤だが、それから数年後に再発されたfontana盤では、観音仕様ジャケで、しかも裏面は ジャンヌ・モローのアップポートレートがエクスタシーなジャケットデザインだ。見開き中面には、トランペットを武器に ジャンヌ・モローに言い寄る?マイルス・デイビス。こういうレコードを手に入れると、またレコード買いがやめられなくなるのだ。


■現在販売されているCDでは、このジャンヌ・モローのジャケットデザインの方を使っている。表面の抽象画のジャケットも捨て難い。


■別に希少なモノではないが名演「AUTUMN LEAVES」が45回転で聴ける輸入盤。裏面は「SOMETHIN' ELSE」盤の未発表音源「ALISON'S UNCLE」。
この盤とまったく同じ内容で、AB面を逆にして「サムシン・エルスの未発表演奏が遂に発見された!!」と、大げさな宣伝コピーで「SOMETHIN' ELSE」盤のジャケットデザインを模した和盤(下)も登場した。


更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26