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グリーン・ドルフィン・エクスタシー

2008.2.20

「コレクター」ご覧になりましたか?美女をコレクションしていくテレンス・スタンプの演技、こわかったですねー、すごいですねー。この映画、あの名匠ウィリアム・ワイラー監督のサスペンススリラーなんですねー。
(淀川長治風に)
■映画「コレクター
1965年制作 監督ウイリアム・ワイラー/主演テレンス・スタンプ


「コレクション」というオタッキーな行為に精をだすのは、圧倒的に男が多い。
山田太一の小説「君を見上げて」に、金庫屋という商売をしている主人公が師匠から聞いた話として、あるコレクションのエピソードがでてくる。
『〜大きな屋敷の大きな座敷の床下の金庫を、四十半ばの、まだ色っぽい未亡人ひとりっきりの立会いで、畳を上げて、四、五十分もかけてあけたというのである。ところが中からは女の裸の写真と呆れるほどの数の陰毛のコレクションばかりで、未亡人は青ざめて立ち上がったかと思うと硬直して、棒みたいに後へひっくりかえって、震えが来ちまって、裾が乱れて、それを荻野さんが抱き上げようとしたらいきなり抱きついてきて〜』
こんな生々しくありそうでなさそうな話、創作で書けるとは思えない。たぶん山田太一さんが執筆のため、本物の金庫屋を取材して聞いた話をアレンジしているんじゃないかと思う。
我家の中学二年生は、大きな図体でいまだに膨大な枚数の「デュエルモンスター・カード」にうずもれて日々悦に入っている。先日、近所のオモチャ屋に付きあったら、女の子向けカードゲーム(名前は知らない)のマシンに対峙して、コレクションファイルを広げて熱中している少女を見かけたから、一概に「コレクター=男の趣味」とはいえないのかもしれないが。
そんな息子の父のマイ・コレクションといえそうなものは、アナログレコードくらいなものだ。ただし、店頭で気に入ったものを、やみくもに買い込んだ2000枚ほどのもの。惰性で溜まったしまったようなものなので、コレクションといえるかどうか。そんな中にわずかにコレクションといえそうなレコードがあることはある。ジャズレコードで「グリーン・ドルフィン・ストリート(On Green Dolphin Street)」がアルバムに収録されているレコードのコレクションだ。「On Green Dolphin Street」は「大地は怒る(1947年)」という映画のテーマ曲だそうだが、この映画を観たことはない。この楽曲がとりあげられているレコードが見つかったら、アーティスト、内容やジャケットの善し悪しにかかわらず、とにかく手に入れる。
この「グリーン・ドルフィン・ストリート」という曲については「SOMETHIN エクスタシー」のページでも触れているが、私のジャズ好きを決定づけた楽曲。ジャズに嵌まったきっかけはマイルスの「枯葉」だが、この「枯葉」は、ジャズのスタンダードとしてあまりにもたくさんのアルバムで取り上げられているため「枯葉」を収録したアルバムなんぞ集め出したら、とんでもないことになってしまう。

■ヨーロッパ盤は、アメリカ盤や和盤に比べて、圧倒的にドラムの録音レベルが高いものが多い。
このCOLOMBIA盤レコードでもそれが確認できる。


こういうふうに、テーマをつくってレコードを集めると、散財したなりのいいことが二つある。その一つは、集めていくことで、自分が知らなかった優れたミュージシャンやそのアルバムと出会うチャンスが生まれるのだ。上の写真は「MARTIAL SOLAL」(マーシャル・ソラール)というフランス人ピアニストの「グリーン・ドルフィン・ストリート」が収録されたアルバム。ジャケットデザインもすばらしく、演奏・ジャケット・音質と三拍子揃った数少ないアルバムの一枚だ。
このアルバムを見つけることになったきっっかけは30数年前にさかのぼる。「お茶の水ディスクユニオン」が当時発行していた店頭チラシに、たまたま「グリーン・ドルフィン・ストリート」特集というのがあり「グリーン・ドルフィン・ストリート」の入ったレコード数十枚をリストにしてあった。このリストをずっと保管していて、こつこつコレクションしていったのだ。これはその中の一枚。オリジナル盤でしか手に入らないので、4万円ほどはたいて購入した。コレクターは金額に糸目をつけない。とほほ。
もう一つのいいことは、同じ曲をたくさん聴くと、ジャズのアドリブの奥深さをかいま見ることができるということ。同じ曲が、それぞれに違った魅力でリスナーを魅了する、これこそジャズならではの醍醐味といえる。そんなエクスタシーを味わえるのも、しつこくこつこつと同じ曲の入ったレコドーを集めたから、のことなのだ。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26