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マルチチャンネル・エクスタシー

2008.4.27

サラウンドな日々

記憶しているゴールデンウィークの休日の名称を、カレンダーで確認しようとして、初日の4月29日でつまずいてしまった。29日は「昭和の日」だそうだ。5月4日「みどりの日」も出てこなかった。4月4日は「オカマの日」なんて、くだらないことは覚えているのに。休日ではない5月1日は「メーデー」だが、いまどき連休の隙間で形骸化している。
電子情報技術産業協会(JEITA)と日本オーディオ協会(JAS)が、5月1日を「サラウンドの日」と制定したそうだ。サラウンドとは、ホームシアターで2個以上のスピーカーを使って、迫力ある立体的な音を出すという、マルチチャンネルサラウンドのこと。代表的な5.1チャンネルサラウンドの語呂で5月1日はサラウンドの日というわけだ。最近はマルチチャンネルというと、こうしたサラウンドをさすようになってしまったが、本来、オーディオでマルチチャンネルというのは、周波数帯をいくつかに分割して、それぞれ個別のアンプとスピーカーで再生するシステムのことをいうのだ。
市販のスピーカーには、高音部を別のパワーアンプで駆動できる「バイアンプ」端子がついているものがある。プチマルチとでも呼びたい、もっとも小規模のマルチチャンネルだ。当方の現用システムは、4つの周波数帯に分けた4チャンネルマルチアンプシステムである。
低音部以外のスピーカーは、コラム「低音エクスタシー」で登場した、オーディオコンサルタントの大重氏から強く勧められた、エール音響のホーンユニットを使っている。エール音響のユニット導入以前、中音・高音スピーカーは音研製作のホーンユニットを使っていた。大重氏はエール音響の高音ユニットを試聴してほしいという。音研製作のホーンユニットは、多くのマニアが使っている定評のある高い性能のユニットだったから、そんなに差はないとたかをくくっていた。最初に試聴に使ったアルバムは「VERY TALL/
OSCAR PETERSON TRIO WITH MILT JACKSON」(Verve)だった。


一曲目「Green Dolphin Street」のミルト・ジャクソンのヴィブラフォンの音色に、強烈なエクスタシーを感じてしまった。このアルバムは、オリジナル盤はもちろん、カナダ盤とかジャケット違いのヨーロッパ盤とか、ここで紹介しているモービルフィディリティの高音質盤とか、同じアルバムを何枚も持っていて、ヴィブラフォンの微妙な音の違いまで熟知している、聴き込んだアルバムだ。だが、エール音響の高音ユニットを取付けて出てきたヴィブラフォン音は、今まで聴いたことがない艶やかでリアリティのあるものだった。
エクスタシーというものは、一度味わうとそれ以上を求めてしまう。ドライバーユニット一台で、軽自動車が買えるほどの超弩級のシロモノ。おいそれとは手に入れられるものではないが、知ってしまったのだ、エクスタシーを。「ほしい!ほかのもぜんぶほしい!マルチエクスタシーを味わいたい!」。気がついたときには、エクスタシーオーディオの天国と地獄に足を踏み入れてしまっていた。
大重氏は「マルチチャンネルシステムは、5ウエイマルチチャンネルでないと、ほんとうの実力は出せない」という。これは、ある程度ちゃんとマルチチャンネルシステムと格闘しなければ分からないことなのだが、60〜150Hz付近の音を低音部として、超低音部・中低音部とはチャンネルを分けて再生しないと、どうしてももたついた音になる。本格的に5ウエイマルチチャンネルをやっている方は、そのチャンネルに、巨大なホーンを使っておられる。当方の4ウエイマルチでは、限界があるのだ。ぜひチャレンジしてみたいものだが、こればかりは住宅事情が足かせとなって実現は不可能だ。
これは余談だが、きちんとセッティングしたステレオスピーカーは、5.1チャンネルサラウンドなど使わなくとも、映画を再生すれば、後方上空からヘリコプターが飛び交うし、魚雷はカラダを突き抜けるように右前方から左後方に発射される。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26