HOME | ECSTASY AUDIO | コラム目次 | コラム集 | レコードジャケット・エクスタシー〈2〉

レコードジャケット・ エクスタシー〈2〉

2008.3.10

中古レコードが入ったダンボール箱を、ずらりと並べた中古レコード屋。うつむき加減に黙々と、コトコトと音を立てて、素早くレコードを物色している客の姿がブロイラーに似ているところから、中古レコードの入った箱は 俗称「エサ箱」とよばている。
中古レコード屋では、そのエサ箱の中身をジャンル分けして並べてある。ノンジャンルの店なら、クラシック・ロック・ジャズ・・・という感じ。ジャズ専門店だとさらに細分化されて、レーベル分けだったり、ピアノ・ベース・サキソフォン・・など、アルバムリーダーの楽器別だったり。そんな分別されたエサ箱のひとつに「ボーカル」がある。たいていは店の隅の方にそのコーナーはある。「ジャズボーカル」でないのは、ジャズじゃないボーカルがいっぱい混じっているから。
「ジャケ買い」をする私は、内容はともかくボーカリストの顔優先で選ぶから 、ジャズマニアのふりをしながらこのコーナーを物色するのは、書店の「エロ系コーナー」で立ち読みするときのような、ちょっとした後ろめたさをあじわう。言い忘れたが、ここでいうボーカルとは「女性ボーカル」のことだ。
最近みつけた女性ボーカルのエクスタシー・レコードアルバムは「Laird Jackson(レアード・ジャクソン)/QUIET FLAME」である。いまどき積極的にアナログ新譜を発売しつづけているVenusレーベルだ。
■このレアード・ジャクソンのジャケットを手にしたときにすぐ思い出したことがある。私の一番好きな女優のひとり、サラ・マイルズが主演した映画「午後の曳航」(1976年日米合作/三島由紀夫原作)で、美しい三面鏡に向かって腰掛けたネグリジェ姿のサラが、恋した船員(クリス・クリストファーソン)を想いながら自慰するシーンだ。


イタリアの肉体派女優モニカ・ベルッチを彷彿とさせる、大人の色気ムンムンの、ジャズ好きスケベオヤジの食指がうごくことを計算しつくしたようなジャケ写真。曲目とかバックミュージシャンが誰かとか、レコード選びの基本的な思考をすべて停止させてしまうチカラがある。
針をおとすと、ジャケットの顔を見て想像していたよりも高めの、少し張った声で大人っぽく歌うレアード。バックもサイラス・チェスナットはじめ好メンバーでかためた、優秀ボーカル盤である。
巷に出回っている美人ボーカルアルバムはたくさんあるが、ジャケットの美貌にクラッときて、歌を聴いたらとんでもないダミ声だったり、歌がヘタくそだったり。ジャケットの顔が気に入って、歌も、演奏も気に入ってというアルバムはそんなに多くない。もちろん美人の基準は人それぞれだから、欲しくなる美女ジャケットも人それぞれではある。
また、ジャンル分けされていない「新入荷」コーナーのエサ箱に入っていた美女ジャケ盤を慌てて買って聴いてみたら、色気どころか野太い男性ボーカル盤だったり、フルオーケストラのムード音楽盤だったり、とスケベ心が滑りまくる失敗も多々ある。
■有名な超美人ボーカル盤「Peggy King(ペギー・キング)/LAZY AFTERNOON」INPERIALレーベル。このカメラ目線の瞳と目が合って、思わずレジに向かってしまわない人の顔が見たい、と鼻の穴をふくらましてしまうほど、歌がどうとか声がどうとか、いっさいを許してしまえるほどの美しさだ。レイアウトの色調、バランスもいい。こういうアルバムはやっぱりオリジナルで持っていたい。


■「Carole Simpson(キャロル・シンプソン)/All about Carole」
Capitalレーベルがオリジナルだが、手持ちの盤はJasminの再発盤(日本盤の再発がある)なので印刷が汚い。例によって、美術学生の習作みたいなダサいモノクロマークが、さらにジャケットを汚している。たくさん撮影されたはずの写真の中から、この表情のカットをジャケットに選んだデザイナーは、中年男に間違いない。
白人女性らしいさわやかな声で、ストレートに明るく歌う。きっと性格もいいのだろう。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26