自作オーディオエクスタシー

2007.11.05

自作オーディオはマスターベーション。


これは現用のオーディオシステムで唯一使っている自作機器。知る人ぞ知る「金田式DCプリアンプ」だ。以前はこれを単一乾電池20本で駆動。さらに8チャンネル分のパワーアンプも金田式の電池駆動だったから、一度に使う電池の数は100本!とてもアンエコロジーなことをしていた。現用システムでは、これをAC駆動にしてアナログ専用のイコライザーアンプとしてプリアンプに繋いで使用している。(AC駆動にあたっては電源コンデンサに、セラミック大砲形スピーカーで知られる大春五郎さんに譲ってもらった、とんでもなくサイズ・耐圧の大きなコンデンサを使用)
右上のメタリックパープルカラーの2本の円筒は、IKEDA(イケダ)の昇圧トランスをバラして、トランス部分だけをアンプに組み込んだもの。アンプ部のすべての部品に、当時のオリジナルだったのものを使っている。まん中あたりに二つ見える、黒いカップリングコンデンサは、秋葉原の若松通商で当時一個¥10万円也!だった双信SEコンデンサ。

自作を始めたのは高校生の頃から。今みたいにいくらでもバイトの口がある時代ではなかったから、学生には高価なメーカー品を買う金がないというのが、当時の若者がオーディオを自作をする最大の理由だった。工業高校の電子科というクラスに通っていたので、ハンダゴテをにぎるのは学業の延長作業。当時は「初歩のラジオ(廃刊)」「無線と実験(現MJ誌)」「電波科学(廃刊)」「ラジオ技術」など、読み切れないほどの自作・工作記事が手に入った時代。初めてつくったのは、雑誌の記事のデッドコピー6BQ5PPパワーアンプ。秋葉原で見つけたパイオニアのB級品のプリアンプに繋いで、コーラルの16センチフルレンジをヒノオーディオの箱(ボックス自作には工具の資金が必要だった)に入れたもので音を出した。レコードプレーヤーもマイクロ製のターンテーブルやトーンアームを、積層合板をくり抜いてつくった自作。

自分でつくったアンプ(システム)から、音楽が聞こえたときの喜びを経験したことのある人は幸せだと思う。えもいわれぬエクスタシーを味わえる。自作したシステムから出てくる音は、客観的に聴いたらひどい音だったとしても、自分だけには聞こえる最高の音なのだ。そいうい意味で自作オーディオを使って味わえるエクスタシーは、かぎりなくマスターベーションのそれに近い。

本当にちゃんとしたアンプをつくろうとしたら、抵抗やコンデンサだって、1つずつきちんと容量を確認して、誤差が大きければ同じ容量のものをたくさん購入して選別する必要がでてきて、下手をするとメーカー品を買うより金がかかるかもしれない。だから、当時つくったアンプというのは、相当にいい加減な性能のものだったはず。
でも、そんないい加減な自作アンプ(システム)から出てくる音は、妙なる至福の音なのだ。まさにマスターベーションのエクスタシーだ。

■余談だが、写真の左の部品は「金田式アンプ」をつくるときのオリジナルな部品の中で、当時非常に入手しにくかった「2SA566」という電源回路に使うトランジスタだ。先日、ヤフーオークションをうろついていたら見つけて、必要もないのに落札してしまった。今はいい時代だな〜とかつぶやきながら。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26