iTunesでエクスタシーは感じるか?

2007.11.05

「小さいのにこんなにイイなんて・・・ああ、あなたは愛Podナノ!?」





「パソコンやiPodなんかから出る音聴いてたら、耳が腐るよ」

大枚はたいてハイエンド・オーディオ機器をすらりと揃えている入っているオーディオマニアのうちのほとんどは、たぶん iTunes など見向きもしないはずだ。

私自身、長年仕事でMacを使いつづけてきたことから、マシンの買い替えとOSのバージョンアップとともに自然に iTunes を受け入れたけれど、そういう環境でもなければ、いまだに使っていなかっただろう。 iPod は今も持っていない。知り合いから借りて聴いたことはある。借りたのはiPod nano、すごくイイ。

使っているイヤホンの性能も格段に良くなっているようだ。歩きながら、何かしながらイージーに聴く分には、とても聴きやすくて聴き疲れしない音。データが圧縮された音とは、にわかには信じ難いいい音が聴ける。これはおそらくCDというメディアを使っていないことから得られる音なのだと思う。CDを回転させてピックアップで読み取るという、駆動系を介さないためなのだろう。さらに、振動やらフィルター回路やら、CDプレーヤーを使うときに避けられない、音質悪化のファクターもほとんどない。

仕事場のBGMリスニング環境も、最近CDプレーヤーを使うことはやめて、パソコンをオーディオアンプに繋いで iTunes から音源を供給させている。クリックふたつで森進一から八代亜紀へ。実に快適だ。

さらに先日、apple社の「AirMac Express ベースステーション with Air Tunes MB321J/A」という、無線LANを利用してパソコン音源のオーディオを聴くためのアダプタを使って、これをさらにいい音で聴くための方法を試した。


■「プロケーブル」で扱っているベルデン社の最高級LANケーブル(テフロン絶縁プレナムバージョン)1m/¥3400円(写真はサイトのものを使用)
ページ頭の写真で、AirMac Express に繋がっている。上部のアンプとの接合は、最近「プロケーブル」のものに変更した。


この方法は「プロケーブル」というオリジナルケーブル販売サイトで紹介されている。AirMac Expressはコンセントに差し込んで、オーディオ機器と繋ぐだけで、近くで使っているパソコンの iTunes の音源を無線(AirTunes )でオーディオに飛ばして聴けるという、おそろしく便利なもの。

ところが「プロケーブル」で紹介されている方法は、この AirMac Express の最大の利点である無線を使わない。AirMac Express をLANケーブルでハブ(モデム)に繋いで、パソコンもLANケーブルで繋いで、無線でなくLANケーブルの有線で音をオーディオから出すという「裏技」みたいなやり方だ。「プロケーブル」では、そのための極太のLANケーブルを販売している。ヨドバシカメラやビッグカメラではぜったいに売っていない、とんでもなくごついケーブルだ。「プロケーブル」サイトでは「アナログを越えた」とか「音の歴史は、すでに変わってしまった」とか、すごいことが書いてある。

当方のシステムでどうかというと、とりあえずはいい音がでてくる。が、いまのところアナログを越えてもCDを越えてもいない。もうしばらく聴き込む必要がありそうだ。興味のある方、ぜひ「プロケーブル」サイトをご覧あれ。

さて、この iTunes を基幹とするオーディオ環境や音からエクスタシーは感じられるか。
「感じない」のだ。なぜなのか。
簡単すぎるからだ。LANケーブルとオーディオ機器に繋ぐケーブルをおごるくらいですることがない。正確にいえば、パソコンのオーディオカードを取り換えるとか、「プロケーブル」サイトの投稿欄にあるように、ハブのACアダプタを電池駆動にするとか、いくらかマニアックなこともできるのだが、そういう行動を起こす気になれない。感じないのだ、このシステムそのものに。

小奇麗なちょっと頭も良さそうな彼女と、何の努力もなしにすんなりお付き合いできるなんて、ちょっと嬉しいけど、でもちっとも面白くない。もちろんそういうの大歓迎、という人がたくさんいるから iPod がいっぱい売れているわけで、それそれでいいのだけれど、やっぱりオーディオでエクスタシーを味わいたい私としては、そんなのつまんないじゃん、だ。恋愛だってそれなりの努力がなければ味わえるエクスタシーも深くない。というかその努力の二文字の中にこそ、エクスタシーは潜んでいるのだ。
結論をむりやり引っぱり出すとすると「 iTunes は疑似恋愛である」だな。

CDというメディアを愛でることもせずに、CDプレーヤーを撫でたりCDを挿入するという行為もなしに、エクスタシーを味わおうなど、オーディオの風上にもおけないぞ、と。

今、セックスすること自体に興味を持てなかったり、億劫がったりする傾向の若者が増加していることが顕著である、と何かで読んだことがあるが、努力なしに適当に良い音で音楽が聴ける iTunes オーディオっていうのは、いかにもこの時代ならではのものという気がする。
ごくごくマイノリティではあるが、アナログを初体験しようとする若者もいるらしい。廉価版のレコードプレーヤーは売れているそうだ。今どきアナログレコードを聴こうなんていう物好きは、きっとスケベな奴にちがいない。たいへん健全でよろしい。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26