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DAC・エクスタシー

2008.3.7

私には「疣痔」「食道裂腔ヘルニア」「不整脈」の三つの持病がある。疣痔は一度手術で切除したが、切除したところの反対側に再発して、以来、数十年その次男イボと仲良くしている。食道裂腔ヘルニアは、数年前から発症した。食道が貫いている横隔膜の穴が緩んで、胃の最上部が横隔膜の上にでてしまうため、そこからしみ出る胃液が、接している食道の壁面を荒らしてしまう病気。ストレス・加齢・食生活などが原因だ。ストレス社会ということで、最近増えいているらしい。毎日一回胃酸を抑える薬を服用している。
不整脈はかなりひどいもので「上室(心房)性期外収縮」という怖そうな病名。ホルターという一日中の脈を記録する装置をつけて何度か検査したことがある。普通の脈拍に不正な脈がプラスされるため、一日1万回くらいの不整脈が発生している。サンリズムという名前の薬を服用したこともある。薬は副作用があり、一生飲みつづけなければいけないので、すぐ止めた。「上室性期外収縮」というのは直接命にかかわるものではなく、とりたてて自覚症状もないので、気にしないことにした。だが、医者に言わせると「脈の数が多いと心臓に負担がかかる。このままにしておくと、寿命が短くなる」ということだ。
心房性の不整脈に対して「心室性」の不整脈は、命にかかわる。最近規制が排除され、救急車や多くの公共施設などに設置されているAED(自動体外式除細動器)は、心室のけいれんによって心臓が血液を送るポンプの機能が失われる「心室細動」を、電気ショックで取り除いて心臓の機能を正常にする医療器具だ。
実は、最近不整脈がなくなったのだ。昨年夏の成人病検診で、既往症欄に記入がなかったのだが、指摘されなかったので気がつかなかった。発生原因もわからなければ、終息した原因もわからない。かかりつけの鍼灸の先生は「意識にのぼらないストレスだったんじゃないか」という。とりあえずやっぱりストレスか、と納得することにした。
さて、思いのほか前フリが長くなってしまったが、DACである。DAC (デジタルアナログコンバーター)は、CDなどのデジタル信号をアナログ信号に変換して、音を再現できるようにするためにある。どんなCDプレーヤーにもDAC部は入っているから、単体のDAC機器がなくてもCDは再生することができる。そこへあえて使うのが単体DACなのだ。
ご存じのように、有名メーカー製のCDプレーヤーにも、CDトランスポートとDACが分離したセパレートタイプのものがたくさんある。分離しているのは何だかマニアックだし、CDプレーヤーのデジタルアウトにDACを繋いで使うこともできるが、何だか意味がないような気もしていた。だがこのDAC、使うと使わないとでは驚くほどの違いがあることを知った。
心臓の心室細動を正常にするAEDのように、ピックアップされたCDの音(データ)を正常にするのがDACなのだ。単体のDACにはちゃんと存在意味がある。DACを通した音はまさにエクスタシーである。「試聴エクスタシー」タイトルのコラムで書いたとおり、REQSTのDAC-NS1SというDACの試聴会で、はじめてそのエクスタシーを味わった。
試聴会では、3台のCDプレーヤーにDAC-NS1Sを繋いで音を聴くことができたのだが、その中の一台は当方が使用しているESOTERICのSACDプレーヤーの上位機種だった。当方のプレーヤーも定価は80万円以上もする高価な機種だが、そのわりにはまったく魅力のない音で、アナログレコードの音質には遠く及ばないものだった。それがDAC-NS1Sを通しただけで、すばらしい魅力的な音質になるのだ。DAC-NS1Sは販売価格税込38万円。この価格を高いと感じるかどうかは、一度試聴して見ればわかる。
さらに高音質低価格と評判のDACにインフラノイズのDAC-1がある。標準価格204,750円。実売価格はもっと安いから、DAC-NS1Sの半分ほどのDACだ。このDACの音は試聴したことがないので、いいかげんなことは言えないが、インターネットの検索結果ではかなりの評判のようだ。


さらにもう一台、日本オーディオのDA-5000Wも高音質低価格DACだ。上記二機種よりもさらに低価格の標準価格199,500円。このDACは日本オーディオから試聴機を貸し出して試聴することができた。音の傾向はやや異なるが、上記のDAC-NS1Sと同様の音質効果をもたらすことを、自宅で確認した。「試聴エクスタシー」のページで書いた「MILES DAVIS IN CONCERT」の一曲目「MY FUNNY VALENTINE」トランペットの再生音の改善である。
ここで紹介した3台のDACに共通することとして、シャーシ部分に工夫がみられる。DAC-NS1Sはシャーシ内部に、振動コントロール素材として、木材(新月伐採ヒノキ)を貼り付けてる。DAC-1では、内部の基盤をマグネットでフローティングして、外部振動の影響を最小限にしている。DA-5000Wは試聴をくり返した結果、シャーシの材質のほとんどを木製としている。どちらかといえば、アナログ機器に効果がありそうな、自然素材の採用や構造の工夫は、実はデジタル機器の場合の方が影響が大きいらしい。ケーブルなども、アナログ機器のものより、デジタル機器に使うケーブルの方が音に影響するようだ。
躯体の大きさを考えると、インフラノイズのDAC-1がもっとも小型で、スペースファクターはよい。デザインではREQSTのDAC-NS1Sが、洗練されている。日本オーディオのDA-5000Wは、デザインが今一つだが低価格。それぞれに魅力がある。どれを選んでも、あなたのシステムがまともなものなら、思わず声を出してしまうほどのエクスタシーを味わえるはず。

更新日 2020-04-26 | 作成日 2020-04-26